朝の小児科ICU回診。レジデントノートにでも載っていそうな2例。

  • 1歳半男児。元来健康であったが、2日前から突然左腕を動かさなくなった。小児科当直医が左肩のレントゲン写真と頭部CTを撮像し、放射線科から「左肩関節と頭部に異常所見なし」とレポートが返ってきた。仕方なくParacetamolを飲ませて様子をみている。左腕をだらんとさげており、触ると激しく泣く。
  • 10歳男児。発熱と汎血球減少症の精査目的で入院。マラリアはGiemsa stain(-)。輸血とVancomycin+Gentamicinを開始し、解熱傾向となる。細菌検査室からの報告用紙に、入院時と入院5日目の血液培養からStaphylococcus aureusが同定され、Vancomycin耐性、Cephalosporinに感受性ありと記されている。そこで小児科担当医はVancomycinからCeftriaxionに変更した。

 もちろん前者は肘内障で、後者は細菌検査技師の記入ミスである(Vancomycinに感受性あり)。前者は左肩のレントゲン写真の下に映っている肘関節を見ればわかるし、それ以前に経過から第一に疑わなくてはならない。後者もおかしいと思いさえすれば、細菌検査室に電話すればわかる。要するに検査結果を鵜呑みにして全体が見えていないのだが、しかし、これだからベトナムの医療レベルは云々というのはまったくフェアではない。第3者の目だから気づくこともあるし、なにより私自身を含め、日本でこれに類することがないとはいえない。むしろ必要な検査をオーダーでき、その結果を報告するシステムがあり、使おうと思えば薬があるというベトナムの医療システムに感心すべきだろう(もっともそれはカンホア総合病院が地域中核病院だからで、山間部に行けば事情はまったく違うが)。