2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

柄谷行人を読む(24)『日本近代文学の起源』

要約:『日本近代文学の起源』、IV「病という意味」、V「児童の発見」 香田蘆花の『不如帰』で、主人公は結核によって美しく病み衰えていく。ここで結核はメタファーとしてあり、結核の神話化がある。 結核菌は結核の原因ではない。結核菌が結核の原因だとい…

柄谷行人を読む(23)『日本近代文学の起源』

そこで、この前半部で論じられている「風景」、「内面」および「記号論的な布置」というものをはっきりさせておくことにしましょう。それにはいくつかの段階が必要です。ここでは「内面の発見」の議論にしたがって、「風景」と「内面」が言=文によって成立…

柄谷行人を読む(22)『日本近代文学の起源』

ではこの諸概念の相互関係に注目しながら、前半部の内容を振り返ってみましょう。まず「風景」とは、さしあたって客観的存在物であり外界のことです。さしあたって、というのは、この言葉が指すものに関して多少の混乱があると思われるからですが、詳しくは…

柄谷行人を読む(21)『日本近代文学の起源』

『日本近代文学の起源』は『マルクスその可能性の中心』と違って、明確な起承転結があるわけではありません。しかし、その論点から大きく3つのパートに分けることができます。すなわち、近代文学の基本概念の成立を論じた前半部(I「風景の発見」、II「内面…

柄谷行人を読む(20)『日本近代文学の起源』

『日本近代文学の起源』は、「季刊藝術」1978年夏号〜1979年冬号、「群像」1980年新年号〜6月号に掲載され、1980年に単行本として出版されました*1。ごく一般的な解釈からすれば、本書の内容は、われわれにとって自明と思われる「風景」や「内面」といった概…

カンホア総合病院で開催されたHandicap International主催のセミナーにオブザーバー参加。Handicapは主に途上国における障害者支援を目的として活動する国際NGOで、世界に8つの支部をもち、50カ国で活動している(Handicap International Annual Report 2006…

朝の小児科ICU回診。レジデントノートにでも載っていそうな2例。 1歳半男児。元来健康であったが、2日前から突然左腕を動かさなくなった。小児科当直医が左肩のレントゲン写真と頭部CTを撮像し、放射線科から「左肩関節と頭部に異常所見なし」とレポートが返…

だんだん暑くなってきた。ルイジアナのプールで泳ぐ。

カンホア省衛生局で会議。グエンティンテャットのスペイン料理屋で打ち上げ。

柄谷行人を読む(19)『マルクスその可能性の中心』

あらめてこの自己批判の構図を検討してみてみましょう。まず人間と物質は違うという現実があります。しかし、ただ単に違うというところにはいかなる関係もなく、社会の問いもありえません。社会の問いは、単に違っているだけの人間と物質の間に、何らかの関…

柄谷行人を読む(18)『マルクスその可能性の中心』

したがって柄谷がいう「貨幣の形而上学」批判は、貨幣じたいに向けられたものではありません。貨幣とは、人間と物質のもろもろの関係をすべて物質に還元する唯物論の結果として生み出されたものだからです。その批判は貨幣を生み出すもの、つまりは唯物論を…