ミャンマーと思いきやアイスランドに

innhatrang2008-05-29



ミャンマーのサイクロン被災の件。


25日のヤンゴンの会議をうけて、各方面ともに、少しずつ動き出している模様

私のところにも研究所と某NGOから、派遣の際の意思確認の連絡が入った。

こういうとき、ちょっと冷静に考えなくてはいけない。

世間ではあまり認識されていないので言っておくと、今回のミャンマーや、四川省地震に限らず、こういう大規模な自然災害の直後に、外国人の医者や看護師が何人か聴診器とメスと薬箱を持って出かけたところで、それほど役に立つわけじゃない。

優先順位からすれば、生存者の救出はもちろんのこと、避難民キャンプの設営、水衛生の管理、食料管理、ワクチン接種などが先で、そのなかで医療関係者の役割というのは、実際には非常に限られている。

もちろん、それでも、被災地に行って診療所を開けば、患者はやってくる。

しかし、それは本当に、外国人の医者が診なければならないひとたちなのだろうか。


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誤解をうむことを覚悟で、しかし、ほとんど誰も読んでいないから大した影響もなかろうと、たかをくくって書いてみる。

2004年末のスマトラ沖地震津波のとき、世界中に異様なまでの援助熱がまきおこったことは、多くのひとが覚えているだろう。

私も感染症の調査を目的として、被災から2週間後のスリランカ東南部に入った。

当時、スリランカは積極的に海外からの援助を受けいれていた。

たくさんの人が亡くなった被災地の状況は悲惨だったが、われわれが調査した範囲では、キャンプはおおむねよく管理され、食料や水の管理やワクチン接種も、もちろん改善点を指摘すればきりがないけど、危機的な状況ではなかった。

そして現地の医療機関も十分に機能していた。

つまり、被災をまぬがれた生存者の状況は、少なくとも大勢が生きるか死ぬかという状況ではなかったのである。

そこに、各国からたくさんの医療団体が入ってくる。

明らかにそれは現地のニーズに比して、供給過多の様相を呈していた。

しかし、彼らも支援者たちから寄付を集めてわざわざやってきたのに、「行ってみたら必要ありませんでした」と、のこのこ引き返すわけには行かない。

だから、いくつかの避難民キャンプでは、複数の団体が、日替わりで患者の診療にあたっていた。

よく言えば役割分担だが、うがった見方をすれば、限られた患者の数をお互いにシェアすることで、自分たちの実績をつくりだしていたのである。


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これは私個人のみた、非常に限られた一例であって、すべての現場がそうだというわけではないことは、しつこく強調しておく。

ただ、こういう被災直後の混乱に、海外の医療関係者が何も考えずに入っていくと、医療の需要と供給の不釣合いに加担するだけになる可能性があることは注意しなくてはならない(WHOがある程度の情報は管理し、調整役にはなるけれど、イニシアティヴをとって再分配するほどの力はない)。

というわけで、被災後、どこそこから何人の医師団が派遣されたとかいうニュースを見ても、本当にそれが現地のニーズを反映したものなのか、冷静な目で判断したほうがいい。

そして行くほうも、本当に自分が役に立つのかを考えて行かなくてはならない。


とまあ、それが理想ではあるのだけど、こういう仕事をしていれば、どこからでも要請があればすぐにも行きたいのが本音。

派遣要請の際には行くか、という連絡にはもちろん行くと答えておいた。

しかし、じつは来週末から一週間、アイスランドに行くことになってしまったので、実際にはすぐには行けない。


ニャチャンからアイスランド・・・遠いなあ。


追記:結局、某国際NGOからは日本国内の内科医がミャンマーに派遣されたもよう。活躍を期待したい。