医学基礎論研究

書評:福岡伸一『生物と無生物のあいだ』

昔話からはじめよう。もう10年以上も前のことだが、医学生時代、私は生命科学の一般啓蒙書を読むのが好きだった。科学的事実だけが並んでいる教科書とは違って、生命とは何か、遺伝子とは何か、脳とは何か、といった本質的な問いに迫る自由な発想がそこには…

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ヒトゲノム・プロジェクトは、すでにヒトゲノムの全塩基配列を解読し、その機能を解析する段階となっている。これにより、遺伝子治療をはじめとするオーダーメイド治療の可能性が期待されている。しかしその実現の前に、ひとつの素朴な疑問を解決しなくては…

私は今後、医学基礎論研究と称する一連の考察により、医学基礎論の確立を試みたいと思う。この試みは、明確にひとつの目的をもっている。それは医学を、臨床医学、基礎医学、社会医学などの領域の相違を問わず、一貫して基礎付けることが可能な体系を構築す…